いぬの夜鳴き

夜鳴きと怪文書

No.25

三文字分の元気

クトゥルフ神話TRPGシナリオ「異能警察は、英雄じゃない」(作者:弱小亭ろっしー様)のネタバレがあります。

探索者の二次創作です。
あくまでも自分がこのシナリオを経て書きたくなった妄想SSです。
NPCの喋り方は完全に妄想なので薄目でお願いします。
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 ざんざざんざと雨粒が跳ねる。
 いくら季節が巡っても、雨の降る夜は心がざわついてしまうもので。少しでも気を紛らわそうとテレビをつけていたが、芸人渾身のネタもスタジオの笑い声も全くもって効果がない。
 そっとテレビの電源を消してベッドに倒れ込む。
 外から聞こえてくる雨音がどんどん大きくなっていくと同時に、ごうごうと青い炎が頭の中に広がっていく。
 時計は二時を示していた。良い子はいま頃夢の中。
(流石にこの時間は……)
 ロック画面をじぃと見つめてパタン、と伏せる。
 迷ったけれど仕方がない、深夜に叩き起す方が申し訳ない。
 朝になったらきっと晴れている。そう思って目を閉じようとしたその時、初期設定のままの着信音が鳴り響く。慌ててスマホを手に取るとそこには見慣れた漢字三文字。
「も、もしもし……」
「よっ。ハル、暇してるじゃん? ゲームやんね?」
「……夜中だよ?」
「ハルだって寝れないからこうして電話取ったじゃん?」
 図星。返事がないことを気にするつもりはないようで、電話の向こうからは東の鼻歌とゲームの効果音が聞こえてくる。
「……ちょっと待って、準備する」
「早くするっつーの!」
 スマホをスピーカーモードにして、枕元のゲーム機を手に取る。彼と遊ぶためだけに買ったこのソフト、最初こそボタン操作や画面切り替えに苦戦していたが、いまではもう慣れた。
 流れるようにゲームの中の彼と合流する。画面の中は雨戸の向こうの天気とは違い、真っ青な空が広がっている。
「お待たせ」
「っし! じゃあほら、これ。これやろうじゃん」
「やだ、こっち」
 えー、という彼の言葉を無視してクエストを選択していく。文句を言いつつも私の好きなようにやらせてくれるのは、参っている私に対する彼なりの気遣いだ。
「東」
「んー?」
「ありがとう」
「いいっつーの。このクエスト終わったらあっちのやつもやるじゃん?」
「ん」
 彼の声が雨音をかき消していく。先程まで確かに心に鎮座していた暗い気持ちは溶けて消え、気付けば朝になっていた。
 今日が休みでよかった、と二人で笑いながら電話を切る。すぽん、と音を鳴らしてやって来たメッセージには「起きたら昼飯!」とだけ書かれていた。
「…………起きたらって、何時だろう」
 くすりとしながらスタンプを送り、布団に潜る。
 結局起きたのは夕方。彼とはだいぶ遅い昼食もとい夕食を共に過ごすことになった。
▶とじる

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#異能警察 #青木春美

怪文章