いぬの夜鳴き

夜鳴きと怪文書

No.23

君との距離は45センチより近い

その時の雰囲気で描いた自探索者夢小説風SS。
十二星座館牡牛座PC。

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 コツ、コツと規則正しく靴が鳴る。
 少しだけ先を行く彼の背中に言葉を投げる。
 誰だって良かったじゃないか、どうして自分だったのか──と。
「あなたが良い。それ以外の理由はないですよ」
 彼が振り向いて微笑む、それだけなのに体中の熱が顔に集まる。
「頬っぺた、真っ赤」
 ひんやりとしたものが頬に触れる。
 それが何かは考えなくてもわかる。
 くすくす笑う彼がちょっとだけ腹正しくて睨む。
 ごめん、と言うが謝るつもりはないようで、ふにふにと頬の感触を楽しむように指を動かしてくる。
 楽しそうに人の頬をいじる彼を見ているとムカついている自分が馬鹿らしく思えてくる。
 思わずため息をつくとピタリ、手が止まる。
「……怒ってます?」
 いいや、怒ってない……と素直に言う気にはならかった。
 彼の腕をぐいと引っ張る。
 わ、と体勢を崩した彼をその勢いのままぎゅうと抱きしめる。
「え……どうしたの?」
 先ほどまで余裕そうだった彼の声がわずかに揺れる。
 どうしてだと思う、と問えば彼はうぅんとわざとらしく唸ってみせて「君も僕が良いって、思ってくれたから?」とサラッと言ってのけた。
「もう、素直に言ってくれたらいいのに」
 するりと彼の腕が背中に回る。
「聖夜に誘うのは大事な人だけって、決めてるんです。だから誰でも良かったんでしょ、なんて言わないで?」
 ドク、ドクと心臓が鳴る。
 気が付けば熱は顔どころか全身に、そして彼の頬に伝わっていた。
▶とじる

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#アイン

怪文章